遠隔医療を導入する際、「どのシステムを選べばよいのか」「どのような機器が必要なのか」という点から検討を始める医療機関や自治体、医療関連企業は少なくありません。
遠隔医療では、パソコンやタブレット、カメラ、マイクなどを用いて映像と音声をつなぐだけでなく、用途によっては医療画像、検査データ、患者情報、バイタルデータなどを安全に共有する仕組みが必要になります。
また、遠隔医療には、患者と医師をつなぐオンライン診療だけでなく、医療従事者同士をつなぐ遠隔画像診断、遠隔病理診断、専門医による遠隔コンサルテーション、遠隔ICU、遠隔手術指導など、さまざまな形態があります。
そのため、必要となる遠隔医療システムや機器も、目的によって大きく異なります。
厚生労働省も、遠隔医療を地域医療の充実に重要なものと位置付け、遠隔医療システムの導入状況を公表するとともに、遠隔医療のための情報通信機器の整備に対する補助事業を実施しています。
一方で、システムや機器を導入しただけで遠隔医療が機能するわけではありません。
医療機関にとっては、自院の診療フローへどのように組み込むか。
自治体にとっては、地域の医療課題に対してどの医療機関とどのような仕組みを構築するか。
医療関連企業にとっては、製品やシステムを提供するだけでなく、実際の医療現場で継続的に利用される運用まで設計できるか。
それぞれ異なる視点が必要です。
本記事では、遠隔医療システムとは何か、必要となる主な機器、用途別のシステム構成、選定時のポイント、医療機関・自治体・関連企業が導入前に確認すべき事項について解説します。
遠隔医療システムとは
遠隔医療システムとは、離れた場所にいる患者と医療従事者、または医療従事者同士を情報通信技術でつなぎ、診療や診療支援に必要な情報を共有するための仕組みです。
重要なのは、
「遠隔医療システム=ビデオ通話システム」
ではないという点です。
遠隔医療の目的によっては、
- 映像・音声
- 診療情報
- 医療画像
- 病理画像
- 検査結果
- バイタルデータ
- 医療機器から取得した情報
などを扱う必要があります。
そのため、遠隔医療システムは一般的に、
- 通信環境
- 端末
- 映像・音声機器
- ソフトウェア
- 医療情報
- 必要に応じた医療機器
- 既存システムとの連携
- セキュリティ
- 運用体制
を組み合わせて構成されます。
つまり、
「何の機器を買うか」
ではなく、
「遠隔でどの医療行為・診療支援を実現したいのか」
から必要なシステムを逆算することが重要です。
遠隔医療そのものの定義やD to P、D to Dなどの種類については、以下の記事で詳しく解説しています。
遠隔医療の仕組みや種類を確認したい方

遠隔医療システムを構成する主な機器
遠隔医療に必要となる機器は、実施する遠隔医療の形態によって異なります。
ここでは、多くの遠隔医療システムで検討対象となる基本的な機器を整理します。
パソコン・タブレット等の端末
遠隔医療では、映像、音声、診療情報等を表示・操作するための端末が必要になります。
代表的なものは、
- パソコン
- タブレット
- スマートフォン
- 専用端末
などです。
オンライン診療では患者側のスマートフォンやタブレットを使用することがありますが、D to Dの遠隔医療や医療画像を扱う用途では、画面サイズ、解像度、処理性能なども重要になります。
機器の選定では、
- 誰が利用するのか
- どこで使用するのか
- どの情報を表示するのか
- 持ち運ぶ必要があるか
- 院内ネットワークへ接続するか
などを確認します。
カメラ
映像による診察や診療支援を行う場合には、カメラが必要になります。
ただし、必要な性能は用途によって異なります。
一般的なオンライン診療で患者の表情や状態を確認する場合と、
- 手術室
- 処置室
- 救急現場
- 専門医による診療支援
などで細かな映像を共有する場合では、求められる画質や撮影方法が異なります。
したがって、単純に「高画質なカメラ」を選ぶのではなく、
- 何を映すのか
- どの程度の精細さが必要なのか
- カメラを固定するのか動かすのか
- 誰が操作するのか
を整理する必要があります。
マイク・スピーカー・ヘッドセット
遠隔医療では、音声の聞き取りやすさも重要です。
診療室、病室、手術室、救急現場などでは周囲の音が異なるため、
- マイク
- スピーカー
- ヘッドセット
- ノイズ抑制機能
などを用途に応じて検討します。
映像が高精細でも、医療従事者同士の会話が聞き取れなければ診療支援は成立しません。
そのため、遠隔医療では映像だけでなく、音声品質もシステム要件として考える必要があります。
モニター・ディスプレイ
医療画像や細かな映像を確認する用途では、モニターの性能も重要になります。
特に、
- 遠隔画像診断
- 遠隔病理診断
- 手術映像の共有
- 専門医による画像確認
などでは、一般的なオンライン会議とは異なる画面表示環境が必要になる場合があります。
必要となる画面サイズ、解像度、表示性能等は用途によって異なるため、医療側の要求を確認したうえで選定する必要があります。
医療機器・測定機器
遠隔医療では、映像と音声だけでなく、患者の状態を示すデータを共有する場合があります。
たとえば、
- 血圧計
- パルスオキシメータ
- 体温計
- 心電計
- 聴診器
- 超音波診断装置
- 生体情報モニター
などです。
こうした機器を遠隔医療で利用する場合には、
- 誰が測定するのか
- データをどのように取得するのか
- リアルタイムで共有するのか
- 記録として保存するのか
- 既存の医療情報システムへ連携するのか
まで検討する必要があります。
通信機器・ネットワーク
遠隔医療では通信環境が不可欠です。
利用環境によっては、
- 院内LAN
- インターネット回線
- Wi-Fi
- モバイル通信
- VPN等
を組み合わせます。
特に医療情報を扱う場合は、「つながればよい」という考え方では不十分です。
厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」では、ネットワーク、認証、利用機器、外部サービス、保守、責任分界、リスクアセスメント等を含めた安全管理が求められています。
遠隔医療システムにはどのような種類があるのか
遠隔医療システムは、用途によって必要な構成が異なります。
代表的なものを整理します。
オンライン診療システム
患者と医師を情報通信機器でつなぎ、診療を行うためのシステムです。
一般的には、
- 患者側端末
- 医療機関側端末
- 映像・音声通信
- 予約
- 本人確認
- 診療
- 必要に応じて決済
などを組み合わせます。
2026年4月からは、改正医療法によりオンライン診療に関する規定が新設され、厚生労働省も同年4月にオンライン診療指針を改訂しています。したがって、オンライン診療システムを検討する際には、システム機能だけではなく、現在の制度や指針を確認する必要があります。
遠隔画像診断システム
CT、MRI、X線等の画像を離れた場所にいる医師が確認し、診断支援等を行う仕組みです。
厚生労働省が公表している令和5年医療施設調査では、遠隔画像診断は病院1,655施設、一般診療所1,972施設で導入されています。
この場合には、
- 医療画像
- 画像閲覧環境
- 通信
- データ保存
- 医療情報システムとの連携
- セキュリティ
などが重要になります。
遠隔病理診断システム
病理画像を遠隔地の専門医等と共有し、診断や診断支援を行う仕組みです。
厚生労働省の令和5年医療施設調査では、遠隔病理診断は病院243施設、一般診療所458施設で導入されています。
高精細な画像を扱うため、
- 画像取得
- 表示
- データ容量
- 通信環境
- 画像品質
などを含めたシステム設計が必要になります。
医療従事者間の遠隔診療支援システム
地域の医師と専門医など、医療従事者同士をつなぐD to Dの遠隔医療です。
たとえば、
- 専門医コンサルテーション
- 遠隔カンファレンス
- 救急診療支援
- 専門診療支援
などがあります。
患者と医師を直接つなぐオンライン診療とは異なり、医療従事者同士の役割分担、責任範囲、医療情報共有などを明確にする必要があります。
遠隔モニタリングシステム
患者の状態を継続的または定期的に確認するための仕組みです。
測定機器や生体情報モニターなどから得られた情報を、
- 医療機関
- 医師
- 看護師
- その他の医療従事者
が確認します。
重要なのは、単にデータを取得するだけではなく、
- 誰が確認するのか
- 異常値を誰が判断するのか
- どのタイミングで対応するのか
- 緊急時にどうするのか
を運用として決めておくことです。
遠隔ICU・高度診療支援システム
専門医等が離れた医療機関の診療を支援する仕組みです。
厚生労働省では、遠隔ICU体制整備促進事業など、遠隔医療設備の整備に関連する施策も示しています。
このような高度な遠隔医療では、
- 複数の患者情報
- 生体情報
- 映像
- 音声
- 電子カルテ等の情報
を統合的に確認する必要があり、単体機器ではなくシステム全体の設計が重要になります。
遠隔医療システムを選ぶ際に重要なポイント
遠隔医療システムの選定では、「機能が多いか」「価格が安いか」だけで判断することは適切ではありません。
重要なのは、医療課題、利用者、診療フロー、既存システム、情報セキュリティ、導入後の運用まで含めて選定することです。
解決したい医療課題から考える
最初に決めるべきなのはシステムではありません。
たとえば、
- 専門医不足を補いたい
- 患者の通院負担を軽減したい
- 地域の医療機関を支援したい
- 訪問診療を補完したい
- 救急医療を支援したい
- 医療技術を遠隔から指導したい
など、目的によって必要な仕組みは異なります。
「遠隔医療を導入したい」
ではなく、
「どの医療課題を遠隔医療で解決したいのか」
まで具体化することが重要です。
誰と誰をつなぐのかを決める
遠隔医療では、
- 医師と患者
- 医師と医師
- 医師と患者+看護師
- 専門医と地域医療機関
- 大学病院と地域病院
など、つなぐ相手によって必要なシステムが変わります。
したがって、システム選定前に、
- 誰が送信側か
- 誰が受信側か
- どこで利用するのか
- 誰が機器を操作するのか
を明確にします。
必要な情報を決める
次に、
- 映像だけでよいのか
- 音声が必要か
- 医療画像が必要か
- 検査データが必要か
- バイタル情報が必要か
- 電子カルテ情報が必要か
を整理します。
必要な情報が決まれば、
- 必要な機器
- 通信容量
- モニター
- システム連携
- セキュリティ
などの要件も具体化できます。
既存システムとの連携を確認する
医療機関では、遠隔医療システムだけが独立して存在するわけではありません。
既存の、
- 電子カルテ
- PACS
- 予約システム
- 医事会計
- 医療情報ネットワーク
などとの関係を整理する必要があります。
連携できない場合、職員が同じ情報を複数システムへ入力するなど、新たな業務負担が発生する可能性があります。
したがって、
「遠隔医療システム単体の使いやすさ」
だけでなく、
「既存業務へどう組み込めるか」
を見る必要があります。
情報セキュリティを確認する
遠隔医療では、診療情報や患者情報をネットワーク経由で扱うことがあります。
そのため、
- 認証
- アクセス権限
- 通信
- 端末管理
- データ保存
- バックアップ
- ログ
- 保守
- 障害対応
- 外部サービス利用
などを確認する必要があります。
厚生労働省の医療情報システム安全管理ガイドラインでは、責任分界、リスクアセスメント、利用機器・サービス、ネットワーク、認証・認可、外部からの攻撃への対策などが整理されています。
医療関連企業側も、
「システムとして安全である」
だけではなく、
「医療機関が安全に運用できる」
ところまで考える必要があります。
導入後の運用負担を確認する
システム導入時には見落とされやすい部分です。
たとえば、
- 予約
- 接続準備
- 端末設定
- 患者支援
- 職員教育
- トラブル対応
- 保守
- アップデート
- 利用状況確認
などが発生します。
遠隔医療が本格運用されるほど、
「誰が運用するのか」
が重要になります。
システム導入により医療従事者の業務が増えれば、継続利用されなくなる可能性があります。
拡張性を確認する
最初は一つの診療科や一施設で導入しても、将来的には、
- 複数診療科
- 複数施設
- 自治体単位
- 地域医療ネットワーク
などへ広げる可能性があります。
そのため、
- 利用者数
- 接続施設数
- 機器追加
- システム連携
- 運用管理
などの拡張性も事前に確認しておくことが重要です。
医療機関が遠隔医療システムを導入する際に確認すべきこと
医療機関では、システム選定より前に、
「実際の診療のどこへ遠隔医療を組み込むのか」
を決める必要があります。
確認すべき事項は、
- 対象患者
- 対象疾患・診療場面
- 担当医師
- 看護師等の関与
- 予約方法
- 患者本人確認
- 診療情報共有
- 対面診療への切替
- 緊急時対応
- システム障害時対応
- 保守
- 職員教育
です。
特にオンライン診療については、2026年4月に改訂された厚生労働省の指針や、医療法上のルールを確認したうえで運用する必要があります。
重要なのは、
「システムを導入できるか」
ではなく、
「安全に診療として運用できるか」
です。
自治体が遠隔医療システムを導入する際に確認すべきこと
自治体の場合、特定のシステムを導入すること自体を目的にしないことが重要です。
まず、
- 医師不足
- 専門医不足
- 患者の移動負担
- 離島・へき地
- 高齢化
- 夜間・休日医療
- 在宅医療
- 災害時医療
など、その地域で解決したい医療課題を整理します。
そのうえで、
- どの医療機関が参加するのか
- 誰と誰をつなぐのか
- 自治体は何を支援するのか
- システム費用を誰が負担するのか
- 導入後の運用主体は誰か
- 利用実績をどう評価するのか
を決めます。
厚生労働省は2026年3月版の自治体向けオンライン診療・遠隔医療事例集を公表しており、自治体の遠隔医療導入では、地域課題に応じた体制設計が重要であることが示されています。
遠隔医療の現在の普及状況や導入課題を確認したい方

医療関連企業にとって遠隔医療システムは新たな事業機会になり得る
遠隔医療システムは、一社の製品や技術だけで構成されるとは限りません。
実際には、
- 映像・カメラ
- モニター・表示機器
- 通信
- 端末・電子機器
- 医療機器・センサー
- 医療情報システム
- クラウド・データ基盤
- セキュリティ
- ソフトウェア
- システムインテグレーション
など、さまざまな技術や製品を組み合わせて構築されます。
そのため、現在は遠隔医療を主力事業としていない企業であっても、自社の技術や製品が遠隔医療システムの一部として活用できる可能性があります。
たとえば、映像技術を持つ企業であれば、診療や医療技術を遠隔地へ伝えるための映像取得・伝送に活用できる可能性があります。
モニター・表示機器メーカーであれば、医療画像や高精細映像、患者情報等を確認するための表示環境が考えられます。
通信関連企業であれば、映像、音声、医療情報等を安定して伝送するための通信基盤が関係します。
センサーや電子機器メーカーであれば、患者の状態を取得する機器や周辺機器として遠隔医療に関わる可能性があります。
IT・ソフトウェア企業であれば、予約、情報共有、データ管理、システム連携、セキュリティ等の領域が考えられます。
このように、遠隔医療は医療機器メーカーや医療IT企業だけの事業領域ではありません。
一方、一般産業で実績のある技術や製品を、そのまま医療現場へ持ち込めば利用されるとは限りません。
医療分野では、
- どの医療課題を解決するのか
- 誰が利用するのか
- 診療フローのどこで利用するのか
- どの医療情報を扱うのか
- 安全性をどう確保するのか
- 既存の医療システムとどう連携するのか
- 医療機関内で誰と調整するのか
- 導入後の運用を誰が担うのか
まで考える必要があります。
つまり、遠隔医療への参入では、
「自社の技術や製品を医療へ販売する」
のではなく、
「自社の技術や製品を使って、どの医療課題を解決できるか」
という発想が重要です。
遠隔医療は、医療、映像、通信、電子機器、ソフトウェア、クラウド、センサーなど、複数の産業が交差する領域です。
自社製品そのものが現在「遠隔医療製品」でなくても、医療機関や自治体、他の技術企業等との連携によって、遠隔医療システムを構成する技術として新たな事業機会につながる可能性があります。
遠隔医療システム導入で起こりやすい失敗
遠隔医療システムの導入では、技術的には利用可能でも、実際の医療現場で十分に活用されないことがあります。
代表的な失敗を整理します。
システム選定から始めてしまう
「遠隔医療を始めるのでシステムを探す」
という順番にすると、目的に合わないシステムを選ぶ可能性があります。
先に決めるべきなのは、
- 解決する医療課題
- 対象患者
- 利用場面
- 医療従事者の役割
です。
機器を増やしすぎる
高性能な機器を多数導入しても、現場で操作できなければ意味がありません。
医療従事者の負担や操作性を考慮し、
「必要十分な構成」
にすることが重要です。
既存業務と切り離してしまう
遠隔医療だけ別の予約、別の端末、別の記録、別の操作になると、職員負担が増えます。
可能な範囲で既存の診療フローへ組み込むことが重要です。
導入後の運用担当を決めていない
システム導入後には、
- 利用者登録
- 問い合わせ対応
- 機器管理
- トラブル対応
- 職員教育
- 保守業者との連携
などが必要になります。
導入時点で運用担当を明確にしておく必要があります。
効果を測定していない
「導入した」という事実だけでは、遠隔医療が成功しているか判断できません。
目的に応じて、
- 利用件数
- 患者の移動時間
- 医師の移動時間
- 専門医療へのアクセス
- 診療継続率
- 職員負担
- 費用
などを評価します。
遠隔医療システムを導入するまでの基本的な流れ
遠隔医療システムの導入では、製品や機器を先に選ぶのではなく、解決したい医療課題を明確にし、その後に診療体制、必要な情報、機器・システム、運用方法を順に設計することが重要です。
ここでは、医療機関・自治体・医療関連企業が遠隔医療システムを導入・事業化する際の基本的な流れを6つのステップで整理します。
専門医不足、患者の通院負担、医療従事者の負担、地域医療連携など、遠隔医療によって解決したい課題を明確にします。
患者、医師、看護師、専門医、地域医療機関など、誰と誰をつなぎ、どの場面で利用するのかを整理します。
映像、音声、医療画像、検査結果、バイタル情報、診療情報など、遠隔で共有する必要がある情報を整理します。
医療要件をもとに、端末、カメラ、モニター、通信環境、ソフトウェア、必要な医療機器等を選定します。
予約、接続、診療、情報共有、緊急時対応、保守、職員教育等を含めて実際の運用を設計します。
限定した患者・診療科・医療機関等で開始し、利用状況、安全性、職員負担、費用対効果等を評価したうえで改善・拡大を検討します。
遠隔医療システムの今後
遠隔医療システムは、単なる映像通信ツールから、
- 医療情報
- 医療画像
- 生体情報
- 医療機器
- 電子カルテ
- 地域医療連携
などを組み合わせた医療基盤へと発展していくことが考えられます。
2026年度の診療報酬改定でも、D to P with Dによる遠隔連携診療について対象や評価の見直しが行われるなど、遠隔医療の活用範囲は広がっています。
また、オンライン診療については2026年4月から医療法上の規定が新設され、制度面でも遠隔医療を医療提供体制の一部として位置付ける動きが進んでいます。
一方で、システムが高度化するほど、
- 既存医療システムとの連携
- 情報セキュリティ
- 運用負担
- 責任分担
- 費用対効果
が重要になります。
今後の遠隔医療では、
「どのシステムが最も高性能か」
ではなく、
「医療課題に対して、どのシステム構成が最も適しているか」
という考え方がより重要になります。
遠隔医療システムについてよくある質問
遠隔医療システムについては、「どのような機器が必要か」「一般的なWeb会議システムでもよいのか」「何を基準に選べばよいのか」などの疑問があります。
ここでは、導入を検討する際に押さえておきたいポイントを整理します。
遠隔医療にはどのような機器が必要ですか?
用途によって異なります。
基本的には、端末、カメラ、マイク、スピーカー、モニター、通信環境などが検討対象になります。
さらに、遠隔医療の種類によっては、医療画像、検査データ、生体情報等を取得・共有するための医療機器やシステムが必要になります。
遠隔医療システムとオンライン診療システムは同じですか?
同じではありません。
オンライン診療システムは、遠隔医療システムの一つです。
遠隔医療には、オンライン診療以外にも、遠隔画像診断、遠隔病理診断、医療従事者間の遠隔診療支援、遠隔ICUなどがあります。
一般的なWeb会議システムでも遠隔医療はできますか?
用途によって求められる機能や安全管理が異なるため、一律には判断できません。
特に診療情報や患者情報を扱う場合には、厚生労働省の指針や医療情報システムの安全管理に関するガイドライン等を確認し、利用目的に応じた安全性・運用体制を検討する必要があります。
遠隔医療システムは何を基準に選べばよいですか?
最も重要なのは、解決したい医療課題に適していることです。
そのうえで、
- 必要な機能
- 操作性
- 既存システムとの連携
- 情報セキュリティ
- 導入費・運用費
- サポート体制
- 拡張性
などを比較します。
遠隔医療システムを導入すれば運用できますか?
システム導入だけでは十分ではありません。
診療フロー、職員配置、患者支援、システム管理、緊急時対応、効果検証などの運用設計が必要です。
遠隔医療の導入では、「システム」と「運用」を一体として考えることが重要です。
まとめ|遠隔医療システムは機器ではなく「医療の仕組み」として設計する
遠隔医療システムには、
- 端末
- カメラ
- マイク・スピーカー
- モニター
- 通信環境
- ソフトウェア
- 医療情報
- 必要に応じた医療機器
など、さまざまな要素があります。
しかし、遠隔医療で重要なのは、機器をそろえることそのものではありません。
必要なのは、
- どの医療課題を解決するのか
- 誰と誰をつなぐのか
- どの情報を共有するのか
- どの診療フローへ組み込むのか
- 安全性をどう確保するのか
- 誰が運用するのか
- 導入効果をどう確認するのか
まで設計することです。
- 医療機関にとっては、診療として安全かつ継続的に運用できる仕組みを構築すること。
- 自治体にとっては、地域の医療課題に適した仕組みを構築すること。
- 医療関連企業にとっては、自社の技術や製品を実際の医療現場で機能する仕組みへ落とし込むこと。
それぞれが重要になります。
遠隔医療システムは、
「どの製品を導入するか」
ではなく、
「必要な医療を距離を越えてどう実現するか」
という視点から設計することが重要です。
遠隔医療の仕組み・種類から確認したい方

遠隔医療の普及状況と導入後の課題を確認したい方

遠隔医療システムの導入・事業化・医療機関への展開を検討している方
本記事の情報について
本記事は、厚生労働省が公表する「遠隔医療に関するホームページ」「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針」「オンライン診療の適切な実施に関する指針」「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を踏まえ、2026年時点における遠隔医療システム・機器の考え方を整理したものです。
遠隔医療に関する制度、診療報酬、情報セキュリティ、医療機器等の要件は、利用目的やシステム構成によって異なり、今後変更される場合があります。
実際に遠隔医療システムを導入・運用する際には、厚生労働省等が公表する最新情報を確認するとともに、必要に応じて医療・システム・法務等の専門家へ確認してください。
厚生労働省「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針」
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」
執筆者:松村 厚
アップストリーム合同会社 代表社員
事業開発、営業・販路開拓、販売チャネル構築、医療・歯科領域の事業承継・M&A等の経験を経て、2026年にアップストリーム合同会社を設立。現在は医療コンサルティングを軸に、医療・ヘルスケア領域の事業推進を支援しています。

